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障害のある人の生涯学習に取り組み、
みんなで学び合う、創り合う。
たまり場の活動記録

障害のある人の生涯学習に取り組み、
みんなで学び合う、創り合う。
たまり場の活動記録

尾方 千春 Ogata Chiharu

愛知県出身。センターでは、障害のある人が安心して学びたいことを学べる環境を整えることで、生きがいを持っていきいきと暮らせるよう、山﨑邸を拠点に学びの場を創る取り組みを行っている。

夕刻のたまり場(山﨑邸) 開催日 毎週水曜15時~19時
和歌山県紀の川市粉河853-3 0736-60-8233

「イギリスで学んだ“みんな違っていい。一人ひとりが自分らしく生きることの大切さ“を、紀の川市で伝え続けていきたい」紀の川市に住んで早5年。都会暮らしも、海外暮らしも、田舎暮らしも経験した尾方さんは、「障害のある人の生涯学習をみんなで学び合いながら創り合いたい」と語る。

ハンディキャップがある人の居場所づくりを

2017年、地域おこし協力隊として紀の川市にやってきた尾方さん。
イギリス生活も長く、管理栄養士の資格も持つ尾方さんは、地域交流に興味を持ち、愛知県から紀の川市地域おこし協力隊に応募した。これまで海外からの人々と交流することや異文化を学ぶことが大好きで、英語に携わる仕事にも積極的にチャレンジしてきた。2020年地域おこし協力隊としての活動が3年間の満了を迎えたが、紀の川市に残って「ゆめ・やりたいこと実現センター」のコーディネーターとして仕事をしている。

「ゆめ・やりたいこと実現センター」で今取り組んでいることは、文部科学省の「地域連携による障害者の生涯学習機会の拡大促進」という委託事業である。障害のある人が学びたいことをみんなで学べる安心できる環境を整えることで、夢や希望をもっていきいきと暮らせるよう支援する取り組みである。

イギリス滞在時に、地域や人々とつながりがもてると紹介されたボランティア活動では、現地の障害のある人と一緒に生活をしたり、様々な活動に参加することでイギリス文化や歴史を学んだ。イギリスでは、それぞれの違いや考えを尊重しあい、障害のある人もない人も好きなことに取り組める環境があると感じ、どんなハンディキャップがあったとしてもみんなで支え合い、夢を実現していくという本当の平等を知ったのだった。
さらに日本に帰ってもいつしか日本の色んな場所で地域交流や居場所作りをしてみたくなった。

夕刻のたまり場は、毎週水曜山﨑邸で開催

「ゆめ・やりたいこと実現センター」が「夕刻のたまり場」を始めたのは、2020年。
様々な障害のある人たちが、集まれる場所を作ることを目的とした場所が「夕刻のたまり場」である。障害のある人が学校を卒業し、就職したりしてしまうと集まれる場所が一段と少なくなる。毎週水曜夕方の数時間、フリーな居場所として、JR粉河駅近くの古民家山﨑邸に仲間たちが集まる。

「ゆめ・やりたいこと実現センター」が目指すのは、障害のある人や様々な困難を抱える人などが地域で生活を行い、衣食住の「生きる」だけでなく、人生を文化的で豊かにするための「活きる」を地域の人や団体と協働して地域に広げていくこと。
ゆめ・やりたいこと実現センターは、全国的にもパイオニア的な取り組みであり、全国からの見学者も多い。歴史的建造物である山﨑邸がもつ場所の温かさ、運営をサポートする人の情熱、そして主役は人生で新たなチャレンジをする障害のある人の「こんなことしてみたい」「挑戦したい」「夢を叶えたい」という純粋な気持ち、それを支えたいという講師の思い。
この4つが相まってやりたいことを形にしていく。

「これ、見てよ~」「早く来て~」と参加者にすぐ呼ばれる尾方さん。いつも参加者の声に耳を傾け、会話をしたり、活動をサポートしたりする。「楽しくゲームや勉強もしますが、悩みや葛藤を共有し、皆で話し合い、考えることで一緒に挑戦する力や心の成長を感じ取っています」と、同僚の藤本さんと笑顔で話す。新しい仲間と出会ったり、友情を育むことで、参加者が自分を肯定する場になる。手を取り合いながら共感した時、「夕刻のたまり場」は唯一無二の空間となっていく。

生涯学習講座「やりたいこと講座」も続いている。時には障害のある人自身が、講師になって、講座を開き、教える側になったりと、まさしくやりたいことが叶う集まりになっている。
2022年度からは、「やりたいこと講座」が発展して、紀の川市と協働の「公民館講座」が開催された。更に地域に広がって欲しいと願う。

マーマレードは柑橘を皮ごと使ったジャムなのです

尾方さんは、紀の川市の特産物を使ったマーマレードジャム作りにもチャレンジ。
しかもただ作っているだけではなく、今年開催された「第4回ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル日本大会」に参加し、紀の川市の特産品であるはっさくと九重雜賀の梅酒を使ったマーマレードでアマチュアの部門の銀賞を受賞した。

マーマレードの定義は、柑橘系を皮ごと使ったジャムのことで、最優秀賞に輝けば、英国王室御用達デパートで商品化され販売される特典がある。紀の川市のフルーツが世界に広まるチャンスでもあると同時に、第2の故郷であるイギリスと和歌山との新たな繋がりを創りたい尾方さんにとって、最も心躍る参加したい大会なのだ。
また「アマチュアの部」への出品料は、全額、慈善事業への寄付となっていて、社会貢献にもなる。しかし、残念ながら柑橘王国和歌山からの参加者が少ないそうで、和歌山の皆さんにももっとチャレンジして和歌山の美味しいフルーツをPRして欲しいと願っている。

丁寧に暮らすことは心を豊かにすることだ、と紀の川市に来たことで気付いた。お金や地位ではない豊かな心が人に幸せの種を蒔くのではないか。表面的な付き合いでは得られない本気の意見を交わして、自分をさらけ出すことで心と心でつながっていく。

イギリスで英語とホスピタリティの心を、紀の川市では身近にある自然や地域の親切な人達から生活の知恵を学び、インプットしてきた。今後はそれらをアウトプットして、たくさんの人に貢献したい。地域に住むタイやベトナム出身の方から教えてもらう料理教室を開催し、紀の川市の皆さんと交流した。ねこ駅長がいる貴志駅周辺でもインバウンドの観光客向けにイベントを催した。言葉の壁を越え、料理や文化の交流で地域活性が生まれた。

「人と人が繋がり新たな友情の輪が広がることで、一人ひとりから夢、元気、笑顔が溢れ出る住みやすいまちになって欲しいです」と尾方さんは語る。

取材:2022年12月14日