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「ラーメンはラーメン屋で」なんて
誰が決めたんだ

「ラーメンはラーメン屋で」なんて
誰が決めたんだ

専門店には専門店のこだわりが確かにある。こだわり抜いたラーメン屋さんのラーメンにはその美学があって、通がこぞって訪れるのも当然頷ける。しかし、専門店以外にも実はラーメンの名店はある。いや、実は専門店でないからこそできる味わいだってあるのかもしれない。ここではそんなあえての「ラーメン屋ではない店の絶品ラーメン」をご紹介したい。

飲み干したくなるけんか地鶏の絶品スープ!
お好み焼き 子子(ねね)

たどり着いたのはお好み焼き屋さん。中に入ると、お好み焼き屋さん特有の鉄板付きテーブルとカウンター、そしてメニューの短冊が壁にびっしり。すじ玉、ねね玉、ミックス玉…といったメニューの中に、ありました「らーめん」の文字が!  さっそくオーダーしながらお話を伺ってみることに。

開店は約40年前。当初は通学路に面していたため、お客様はもっぱら部活や試合帰りの中高生。当時なじみだった子どもたちはパパママになり、今では子どもや孫を連れてくるように。そんな地域の子たちにとっての「第2のおうち」だったこの店の2枚看板が「お好み焼き」とこの「らーめん」だったそう。
らーめんはお好み焼きのだしに使う鶏ガラスープを無駄なく使うためにと作られたメニューだったため、スープが残らない日は「今日はないで」。最近はそう言わないために、大量のスープを仕込んでいるそう。このスープを取る鶏ガラを一昨年紀の川市の地鶏「けんか地鶏」のガラにしたところ、ひときわ濃厚で澄んだ味わいに大変身! さらにおいしさが倍増した。

ひとくち飲むとガツンと衝撃を受けるはず。ていねいにアクを取った鶏ガラスープのインパクトたるや、これだけで飲みたくなるほど後をひく。鶏ガラだけでなく、決め手は地元丸栖の阪次醤油醸造所が造る「マルカツ醤油」なのだそう。麺も近くの北山製麺のオリジナル。トッピングこそ奥出雲豚などを使っているが、ベースになっているのは地元のものばかり。この地元愛が珠玉のハーモニーを造るのかと感動しきり。一気に食べ終えてしまった。

らーめん 580円/お好み焼き(ねねチーズ、ミックスチーズ)各850円

実はこのお店、これだけではないすごい情報があった。なんと女将はあの人気俳優、菅田将暉の大叔母だというではないか! 子どもの頃には菅田将暉が訪れ、カウンターでお好み焼きを食べたそう。その当時あったかは定かでないが、えび、イカ、すじと3種入ったお得な「ねね玉」「ねねチーズ」が最近の人気という。「この空間にあの菅田くんが…!」という一抹の感動を覚えながらアツアツのお好み焼きを頬張るのもまた一興。しかし、締めには珠玉の「らーめん」をお忘れなく。

お好み焼き 子子(ねね)
【住所】紀の川市貴志川町丸栖90
【TEL】0736-64-6835
【営業時間】11:00〜20:00
【定休日】不定休日
【席数】16席
【駐車場】4台


オーダーから手打ちするまさかの麺クオリティ
喫茶 ローランド ホリデー

老舗喫茶店の佇まいの中、赤い提灯に「ラーメン」の文字が燦然を輝く「ローランドホリデー」。この一見昔ながらの喫茶店が、ラーメンマニアにも人気の一軒なのだ。その実力やいかに!? さっそく入ってみることに。

カウンターとテーブル席の店内はやはりTHE喫茶店の風情。実は半世紀近く営業する中で、3度の建て替えを経て今に至るという。もともとは「ホリデー」だけだったという店名。当時2階建ての2階にあった店を階下に持ってきたことから「ローランド」がついたという衝撃の事実が発覚! ラーメン以前にエピソードの破壊力がすごい。

ラーメンをオーダー直後、そのこだわりが発覚した。カウンターの中で繰り広げられたのは、麺を延ばし、カットする工程。まさか製麺からとは!! 聞くところによると、もともと仕入れていた製麺所が廃業する際に、作り方を教わって自家製麺するように。手打ちのため日に15食ほどが限界という。添加物一切なしのたまご麺はもっちり弾力がありつつ、つるっとした食感と麺自体の旨味が抜群だ。

ご自身でも「凝り性」というように、とにかくこだわりの強いご主人。他のメニューも素材や製法にこだわり、肉は部位単位で仕入れて店でさばいているのだそう。デミグラスソースは1週間かけて炊き、当然ラーメンスープも10時間しっかり煮込む本格派。それ以上炊くと癖が出るそうで、ギリギリのラインを攻めている。豚肉は脂と身が分離しないもも肉を用い、ベースの醤油にはここでも阪次醤油が使われているという。

ラーメン 600円

テーブルにはやや似つかわしくない小洒落たピンク岩塩とブラックペッパーのミルがあった。何かというと、まさかのラーメン用という。そのままでも十分おいしいのだが、好みに応じて味変できるというのだ。粗挽きの塩胡蝶は程よいアクセントとなり、さらに味に奥行を演出してくれる。
もっとがっつり食べたい人にはミニサイズの焼きめしが付いた「はんちゃんラーメン」(700円)かおにぎり2個がついた「しんちゃんラーメン」(750円)があったりと、どこまでもツボを抑えたメニュー構成が心憎い!

喫茶 ローランド ホリデー
【住所】紀の川市打田1478-2
【TEL】0736-77-2045
【営業時間】8:00〜18:00
【定休日】不定休
【席数】25席
【駐車場】13台


〆に最強! 五臓六腑に染み渡る愛情の一杯
お好み居酒屋 いちじく

最後にたどり着いたのは、再びお好み焼き屋さん。かと思えば、小宴会のできそうな座敷席があり、カウンターにはネタケース…と、どうやらこちらは居酒屋色が強そうだ。聞くと、やはりもともとはお好み焼きが主流だったが、今は活魚料理などを中心にした居酒屋なのだという。お母さん1人で切り盛りしているため、オープンは週に3日。営業は夕方からだが、営業日は朝から市場に仕入れに向かい、オープンまで仕込みに忙しい。

そんなお好み居酒屋のラーメンとは?というと、カツオと昆布の出汁がベースの、あっさり和風の一杯。店自体が父母の代から守られているもので、この「中華ラーメン」は昭和30年からご主人の母が編み出した口伝の味なのだそう。カツオと昆布という日本人のDNAになじんだ最強のタッグによるアッサリとやさしい口当たりは、スルスルと胃の中におさまっていく。これだけを食べても十分おいしいが、飲んだ後には格別に違いない。事実、飲みに訪れたお客様の定番なのだという。

お母さん直伝の作り方は受け継いでからまったく変わっていない。「こだわるところはこだわるけれど、うちとこはそれこそシンプル」とお母さん。ていねいにとた出汁に加えるのはこれ、と登場したのはまたも阪次醤油! どうにも今日は阪次醤油とご縁があるようだ。というより、紀の川市のラーメンには阪次醤油が欠かせないということだろうか。

中華ラーメン 500円

紀の川市は全国でトップクラスのイチジク産地。そこからの名付けであろうと思いきや、祖父の久(ひさし)さんの名前から「一字で久(いちじで「く」)というところから来ているというではないか。ローランドホリデーと言い、ネーミングの癖の強さに驚かされる。
そんな話を聞きながら一気に完食。豚バラスライスにもやしとネギ、かまぼこと、シンプルイズベストという言葉がぴったりはまる一杯は、お母さんの笑顔とともに、それこそシンプルに五臓六腑に染み渡る。食後、ポカポカとあったかさを感じたのは決してスープのせいだけではないはずだ。

お好み居酒屋 いちじく
【住所】紀の川市貴志川町井ノ口449-1
【TEL】0736-64-2830
【定休日】火・木・土の17:00〜23:00頃 ※お客様が帰るまで
※上記以外休
【席数】15席
【駐車場】1台


3店舗巡ってみた結果、なぜかラーメンと同等のインパクトで印象に残ったのが阪次醤油という奇妙なオチに。ちなみに醤油といえば、味噌の副産物として生まれたという説がある。喫茶店やお好み焼き店のメニューやこだわりから生まれたラーメンもまた、おいしい副産物なのかもしれない。
ともあれ、専門店以外でも楽しめる紀の川市の個性派ラーメンはまさに3者3様の味わいで、いずれもオススメしたい店ばかり。これらを制覇して「こんなラーメンもあるよ」と言えるようにあれば、もはやあなたも紀の川通!